温暖化防止 抜本策の先送りは疑問(中国新聞)
’08/3/5
——————————————————————————–
抜本的な対策を盛り込まないで、地球温暖化を防ぐことができるのか。二酸化炭素(C02)などの排出量削減に向け、政府が決めた「京都議定書目標達成計画」の改定案である。産業界による自主的な行動計画強化などを追加したが、実効性への疑問の声が専門家などから出ている。
議定書で義務付けられているのは、温室効果ガスの排出量を二〇〇八年度から五年間の平均で、基準年の一九九〇年度に比べ6%減らすことである。森林による吸収分なども上乗せして、目標は何とかクリアできるという。
しかし、抜本策導入を先送りしただけに、不安が募る。温室効果ガスを出す権利を国や企業の間で売買する「排出権取引」や、電気やガスなどの使用で発生するC02の排出量などに応じて課す「環境税」である。「速やかに検討すべき課題」にとどめている。
経済界や経済産業省などに異論があるからだろう。「企業の国際競争力を弱める」「すべての国が参加しないと不公平」…。負担が増えることなどへの懸念は強い。
ただ、欧州連合(EU)などが先行する中、日本だけが取り残されてしまわないか。排出量の多い鉄鋼、電力業界などへの配慮から反対してきた日本経団連も柔軟姿勢に転じつつある。御手洗冨士夫会長が先月、排出権取引に前向きな考えを示すなど抵抗感も薄らいでいるようだ。EUなどと連携して、経済成長と両立できるよう改善していく努力を急いでほしい。
福田康夫首相は、前政権が提唱した二〇五〇年までに世界全体の排出量を半減させる長期目標の実現を掲げている。その割には、当面のハードルを越えるのにさえ、四苦八苦しているように見える。説得力はなかろう。
「ポスト京都」と呼ばれる新たな国際的枠組みについて、福田首相は、主要排出国すべてが参加するよう「責任を持って取り組む」と一月のダボス会議で述べた。言葉だけで終わらせてはなるまい。七月には、温暖化防止を話し合う北海道洞爺湖サミットが開かれる。議長国としてリーダーシップを発揮するためにも、京都議定書には加わっていない米国や中国、インドなどへの粘り強い働きかけが求められる。
国民も意識改革が迫られよう。サマータイム導入や、夜更かし型の生活サイクル見直しなどが検討されている。何ができるか、一人一人が考えを深めたい。