温暖化対策 米国の姿勢に落胆する

4月19日(土) 信濃毎日新聞社説

地球温暖化の原因となっている二酸化炭素など温室効果ガスの削減をうまく進められるかどうか-。かぎの一つは、大量排出国・米国が握っている。

ブッシュ米大統領が、2025年までに米国の排出量増加に歯止めをかけ、その後減少に転じさせるとの中期目標を発表した。内容に新味はない。

ブッシュ政権は、先進国に排出ガスの削減を義務付けた「京都議定書」から離脱したままだ。しかし議定書に定めがない2013以降の新たな枠組みづくりでは、国際協調の姿勢も見せ始めた。

昨年6月、ドイツでの主要国首脳会議(サミット)で、2050年までのガス半減を「真剣に検討する」ことで合意している。これを受け米国がどんな中期目標を示すか、注目されていた。

今回の目標では、今後17年間は排出量増加もやむを得ないということになる。後ろ向きの姿勢にはがっかりさせられる。

20年までに1990年比で20%以上削減するとの目標を掲げる欧州連合(EU)とは、大きく隔たっている。パリで開かれた主要排出国会合で、欧州などから不満が続出したのもうなずける。

米政府は共和党幹部や産業界代表に排出量取引の一部導入などの選択肢を示したが反発され、政策転換はならなかったという。

「ポスト京都」では、発展途上国のガス削減も大きな課題だ。米国が削減に積極姿勢を示さないのでは、中国やインドに削減の負担を求めても説得力に欠ける。

昨年12月の気候変動枠組み条約締約国会議(COP13)で、米国や日本が削減の数値目標については難色を示したため、決議に数値は盛り込まれなかった。

米国の消極姿勢は、中期目標でも消えていない。今後の国際交渉は難航が予想される。

米国の温暖化対策が大きく変わるとすれば、今年11月の大統領本選、それを受けた来年1月の新政権発足以降だろう。

日本は今年7月、北海道洞爺湖サミットで議長国を務める。温暖化対策が主要議題となる。主導力を発揮するには、ブッシュ政権に同調するだけでなく、世界の国々の賛同を広く得られる方策を示すべきだ。

福田康夫首相は今年1月、COP13での姿勢から一歩前進し、国別の削減総量目標を設定するよう提唱した。日本の具体的削減目標を示すことも今後求められよう。議定書で課された削減義務をどう果たすかも問われる。