国内対策 新法を提案

年4月13日(日)「しんぶん赤旗」

国内対策 新法を提案

温室効果ガス削減すぐに

環境団体が骨子

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環境市民団体の気候ネットワーク(浅岡美恵代表)は十二日、地球温暖化対策推進法を抜本改正する新しい地球温暖化対策法として「気候保護法」第一次案の骨子を明らかにしました。

同日、東京都内で開かれたシンポジウム「危険な気候変動を防止するために 気候保護法の実現に向けて」で、浅岡代表が「地球の気温上昇を二度に抑えることが求められている。今すぐ温室効果ガスを削減することが将来の世代にもっとも軽い負担になる」とのべ、市民の力で法律制定をとよびかけました。シンポジウムでは、同法の制定を求めるキャンペーンを広げようと弁護士、研究者、環境NGOのスタッフらがパネルディスカッションしました。

浅岡代表は、「二酸化炭素など国内の温室効果ガス排出が大排出源の工場・発電所・輸送業の約八千事業所で日本全体の68%を占め、わずか二百事業所だけで約半分にもなる」と強調。新たな法律制定が必要な理由について、中長期の削減ビジョンをもつことが急務になっているのに「地球温暖化対策推進法は二〇一二年までの期間だけで、京都議定書目標達成計画も数字合わせで削減担保がない」と説明しました。

温暖化、開花早める 過去55年で盛岡

岩手日報

盛岡の桜(ソメイヨシノ)の開花が過去55年で約5日、ニホンタンポポも約4日早くなっていることが盛岡地方気象台のまとめで分かった。温暖化や都市化による気温上昇が要因とみられる。地球温暖化による自然界の変化が表れ始めている現象ともいえ、県地球温暖化防止活動推進センターなどは二酸化炭素(CO2)排出量削減のための呼び掛けを強化している。

同気象台は1953(昭和28)年から桜、タンポポなどの開花の観測を開始。年ごとにばらつきはあるが、2008年までを線形近似曲線で見ると、桜は観測開始当時から約5日も開花が早くなった。

桜の開花に関連する2―4月の気温が1度前後上昇していることが影響しているとみられる。08年の開花は4月12日と平年より11日も早く、観測開始以来2番目に早かった。

同様にニホンタンポポの傾向をみると、観測開始当時から約4日も開花が早まっている。同気象台の統計を基にした推計では、盛岡の年平均気温が過去100年間で1・49度上昇している。

同気象台の佐々木靖気象情報官は「85年以降に早咲きの傾向が強くなっている。気温上昇や、都市化が影響していると考えられる」と分析する。

「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は昨年、21世紀末には20世紀末より2・4―6・4度気温が上昇すると予想する。

地球上で最も明確にCO2量の増加傾向をとらえる南極・昭和基地では、83年以降のCO2量が約40ppmも上昇するなど、温室効果ガスの増加は深刻だ。

桜の早咲きなど県内の実態も踏まえ、県地球温暖化防止活動推進センター(盛岡市)は警鐘を鳴らす運動を展開。冷暖房の温度設定や過剰包装の削減、環境に優しい自動車利用「エコドライブ」などを呼び掛ける。

同センタースタッフの斎藤恵美子さんは「冷暖房の設定やエコドライブのほか、地産地消もCO2削減につながる。生活をていねいに見直すことから始めてほしい」と強調する。

(2008/04/21)

広がる穀物輸出規制/「余剰の時代」の終わりか

河北新報

輸出税を課したり輸出枠を設けたりと、穀物の輸出を規制する動きが主要生産国で相次いでいる。ほとんどが新興国で、穀物価格の高騰に伴って増加する輸出を抑え、国内供給を優先させるための措置だ。

地球温暖化による異常気象の頻発、バイオ燃料の増産に加えて、こうした動きが広がれば、世界の穀物需給はさらに逼迫(ひっぱく)する。世界最大の食料純輸入国である日本にとっては脅威であり、食をめぐる政策・戦略の練り直しが急務だ。

輸出規制の影響が最近あらわになったのはコメ。規制したのは中国、インド、ベトナム、エジプトだ。貿易量が減少したため、国際価格も大幅に上昇。輸入に頼る香港やフィリピンでは、消費者が買いだめに走るなど“コメ騒動”を引き起こした。

この例ばかりではない。米国やオーストラリア、ブラジルなどは別だが、ロシアが大麦、小麦に輸出税をかけたのをはじめ、ウクライナ、セルビア、アルゼンチンなども小麦やトウモロコシを中心に規制を敷いた。

これらの国々、特に中国とインドでは人口増が著しい。さらに日本も経験したように、経済成長とともに食生活が変化し畜産物や脂質の摂取傾向が強まっている。食料としても飼料としても穀物の国内需要が高まったことが輸出規制の背景にある。

これまでの穀物貿易はいわば「余剰の時代」の産物だった。国内であり余った物を輸出し国際市場で「商品」として取引してきた。が、その動きは影を潜め国内供給を優先する流れに変わった。穀物は自国民の生存と安全に不可欠な「戦略物資」としての色彩を強めつつある。

日本は官民ともに、そうした現状を認識する必要がある。

穀物の貿易量は大豆が全生産量の30%に上るものの、コメは7%にすぎず、小麦、トウモロコシも10%台にとどまる。

現状のまま推移すれば、日本は、経済成長が著しく、いずれ輸入国に転じかねない中国やインドなどと、しぼむパイを奪い合うことになる。そうなれば価格はさらにつり上がり、争奪戦に勝っても負けても国民生活に計り知れない打撃を与えよう。

日本の食料自給率は39%、基礎食糧である穀物に至っては27%にすぎない。余剰の時代にどっぷりとつかってきた結果だ。長い眠りから早く目覚めなければならない。

国内農業はかつて過保護という強い批判にさらされ、保護が大幅に削られた。生産効率を高めるため大規模化を促し価格決定も市場原理に委ねる政策が取られてきた。ところが、自給率は一向に上がらず農業現場の疲弊感はむしろ増している。農政の転換が必要なのは明らかだ。

ただ、自給率は急に向上するものではない。外に向けては輸入相手国の偏りをなくすなどして輸入の安定化を図る努力が要るし、備蓄についても戦略的な取り組みが必要ではないか。

われわれ消費者も食べ残しや食品の廃棄をなくすよう努めたい。われわれの食の在り方が世界の飢餓と無関係ではないことも忘れてはならない。
2008年04月20日日曜日

温暖化対策 米国の姿勢に落胆する

4月19日(土) 信濃毎日新聞社説

地球温暖化の原因となっている二酸化炭素など温室効果ガスの削減をうまく進められるかどうか-。かぎの一つは、大量排出国・米国が握っている。

ブッシュ米大統領が、2025年までに米国の排出量増加に歯止めをかけ、その後減少に転じさせるとの中期目標を発表した。内容に新味はない。

ブッシュ政権は、先進国に排出ガスの削減を義務付けた「京都議定書」から離脱したままだ。しかし議定書に定めがない2013以降の新たな枠組みづくりでは、国際協調の姿勢も見せ始めた。

昨年6月、ドイツでの主要国首脳会議(サミット)で、2050年までのガス半減を「真剣に検討する」ことで合意している。これを受け米国がどんな中期目標を示すか、注目されていた。

今回の目標では、今後17年間は排出量増加もやむを得ないということになる。後ろ向きの姿勢にはがっかりさせられる。

20年までに1990年比で20%以上削減するとの目標を掲げる欧州連合(EU)とは、大きく隔たっている。パリで開かれた主要排出国会合で、欧州などから不満が続出したのもうなずける。

米政府は共和党幹部や産業界代表に排出量取引の一部導入などの選択肢を示したが反発され、政策転換はならなかったという。

「ポスト京都」では、発展途上国のガス削減も大きな課題だ。米国が削減に積極姿勢を示さないのでは、中国やインドに削減の負担を求めても説得力に欠ける。

昨年12月の気候変動枠組み条約締約国会議(COP13)で、米国や日本が削減の数値目標については難色を示したため、決議に数値は盛り込まれなかった。

米国の消極姿勢は、中期目標でも消えていない。今後の国際交渉は難航が予想される。

米国の温暖化対策が大きく変わるとすれば、今年11月の大統領本選、それを受けた来年1月の新政権発足以降だろう。

日本は今年7月、北海道洞爺湖サミットで議長国を務める。温暖化対策が主要議題となる。主導力を発揮するには、ブッシュ政権に同調するだけでなく、世界の国々の賛同を広く得られる方策を示すべきだ。

福田康夫首相は今年1月、COP13での姿勢から一歩前進し、国別の削減総量目標を設定するよう提唱した。日本の具体的削減目標を示すことも今後求められよう。議定書で課された削減義務をどう果たすかも問われる。

バイオマスタウン構想の公表数は全国で136市町村に

日本農業新聞 2008.4.14

平成17年2月に5市町村の公表で始まった「バイオマスタウン構想」は、20年3月末までの3年間で136市町村が公表した。

「バイオマスタウン構想」は、バイオマス(生物資源)の発生から利用までを効率的に行っている市町村が、その構想を公表し情報を共有するための取り組み。市町村が構想案の公表を申請し、バイオマス・ニッポン総合戦略推進会議で検討された後で公表される。

バイオマスタウン構想の策定には交付金などの支援があり、政府は22年度までに全国で300市町村に達するのを目標としている。

20年3月末までにバイオマスタウン構想を公表したのは次の市町村。
▽留萌市、瀬棚町(現せたな町)、大滝村(現伊達市)、三笠市、中札内村、東藻琴村(現大空町)、別海町、鹿追町、滝川市、厚沢部町、帯広市、白老町、津別町、豊頃町、東川町、下川町、洞爺湖町(以上、北海道)
▽市浦村(現五所川原市)、青森市、藤崎町、鶴田町、十和田市、中泊町、八戸市、六ヶ所村(以上、青森)
▽紫波町、遠野市、九戸村、花巻市、軽米町、葛巻町(以上、岩手)
▽川崎町(以上、宮城)
▽小坂町、横手市、能代市、東成瀬村(以上、秋田)
▽新庄市、立川町(現庄内町)、藤島町(現鶴岡市)、鮭川町、村山市、西川町、飯豊町(以上、山形)
▽富岡町、会津美里町、大玉村(以上、福島)
▽牛久市(以上、茨城)
▽茂木町、那須町(以上、栃木)
▽川場村、太田市(以上、群馬)
▽山武町(現山武市)、白井町、旭市、大多喜町、睦沢町(以上、千葉)
▽あきる野市(以上、東京)
▽三浦市(以上、神奈川)
▽中条町(現胎内市)、上越市、柏崎市、佐渡市、三条市、聖籠町、新潟市(以上、新潟)
▽立山町、富山市、黒部市(以上、富山)
▽七尾市、加賀市(以上、石川)
▽若狭町、美山町(現福井市)、大野市(以上、福井)
▽早川町、山梨市、笛吹市、韮崎市(以上、山梨)
▽三郷村(現安曇野市)、千曲市、長谷村(現伊那市)、佐久市(以上、長野)
▽白川町(以上、岐阜)
▽湖西市(以上、静岡)
▽豊橋市、田原市(以上、愛知)
▽伊賀市(以上、三重)
▽米原市、野州市(以上、滋賀)
▽夜久野町(現福知山市)、南丹市、京丹後市(以上、京都)
▽岸和田市(以上、大阪)
▽加西市、洲本市、宍粟市、豊岡市、南あわじ市、稲美町、多可町(以上、兵庫)
▽大山町(以上、鳥取)
▽美郷町、安来市(以上、島根)
▽真庭市、新見市(以上、岡山)
▽庄原市、北広島町(以上、広島)
▽宇部市、阿武町(以上、山口)
▽那賀町(以上、徳島)
▽四国中央市、内子町、東温市(以上、愛媛)
▽梼原町、春野町(現高知市)、須崎市(以上、高知)
▽大木町、立花町(以上、福岡)
▽伊万里市(以上、佐賀)
▽西海市、対馬市(以上、長崎)
▽南阿蘇村、水俣市、あさぎり町、天草市(以上、熊本)
▽日田市、宇佐市(以上、大分)
▽小林市、門川町、都農町(以上、宮崎)
▽南大隈町、いちき串木野市、志布志市、曽於市(以上、鹿児島)
▽伊江村、うるま市、宮古島市(以上、沖縄)
各市町村の取り組みや、バイオマスタウンについての問い合わせなどは農水省のホームページで(http://www.maff.go.jp/j/biomass/)。

温室ガス排出

2008年4月12日(土)「しんぶん赤旗」

温室ガス排出

100事業所で4割

気候ネット調べ 電力会社が3割

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日本国内で二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの総排出量の四割は、電力など排出量上位百事業所で占めていることが十一日、分かりました。環境市民団体の気候ネットワーク(浅岡美恵代表)が同日、記者会見で明らかにしたもので、同ネットワークは政府に大規模事業所を対象とした排出削減の新たな対策を求めました。

日本国内で二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの総排出量の四割は、電力など排出量上位百事業所で占めていることが十一日、分かりました。環境市民団体の気候ネットワーク(浅岡美恵代表)が同日、記者会見で明らかにしたもので、同ネットワークは政府に大規模事業所を対象とした排出削減の新たな対策を求めました。
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同ネットワークは環境省と経済産業省が三月下旬に公表した二〇〇六年度の事業所ごとの排出実態をもとに分析しました。

両省は、〇六年度の国内約九千社の温室効果ガス排出量が、日本全体の総排出量の約五割に相当すると発表しました。気候ネットワークによると、この排出量の集計は「電力配分後の間接排出量」という発電所が直接排出したCO2を、電力を消費した事業所に振り分けたうえで集計したものです。

ところが、発電所など発生源である事業所から出た直接排出量でみると、報告のあった事業所全体では日本全体のCO2排出量の67%を占めています。排出量一位の石炭火力発電所「中部電力碧南火力発電所」だけで、下位七千事業所の総排出量にほぼ等しいことがわかりました。

また、上位二百二十事業所で、日本全体の排出量の五割を占め、上位八社だけでも一割に達し、電力会社で三割近くを占めていることも判明しました。

気候ネットワークは「電力業界の排出(直接排出)が圧倒的に大きく、さらに鉄鋼業、化学工業の排出量がきわめて大きいことも明らかになった」と指摘。CO2排出にコスト負担を求める「国内排出量取引の制度設計に有益な情報になる」としています。

菜の花さるこいウォーキング2008

4月5日(土)、菜の花の香りとともに、生産農家を訪ねるイベント「菜の花さるこいウォーキング」が開催されました。天候にも恵まれ、約200人の参加者は、思い思いのペースで約5kmのコースを気持ち良さそうに歩いていました。

5月末にはこの田んぼの菜種を収穫し、秋口には大木町産オリジナル菜種油ができる予定です。

菜の花サポーター(1口1000円)の申込みは「くるるん」まで(0944-33-1231)。

サポーターには、菜種油をプレゼントします。

13年以降の温暖化対策

2008年4月6日(日)「しんぶん赤旗」

【バンコク=井上歩】バンコクで開かれていた国連気候変動枠組み条約の特別作業部会は五日未明、京都議定書期間終了後(二〇一三年以降)の地球温暖化対策の枠組みづくりを進めるための作業計画を採択し、閉幕しました。

作業計画によると、年内にあと三回開かれる作業部会で発展途上国への技術移転や資金問題などについてワークショップ(研究会)を開催。一年目は共通認識を探りながら、二○○九年末にコペンハーゲンで開かれる同条約第十五回締約国会議(COP15)での合意を目指して交渉を進めます。

作業計画によると、昨年十二月のCOP13(バリ)で主要テーマとしてまとめた▽長期目標▽温室効果ガス削減▽気候変動への適応(被害削減)策▽技術▽資金―を並行して関連性を持たせて検討していきます。

六月にボンで開かれる第二回作業部会では、資金と技術(支援)を通じた適応策、気候変動に取り組むための投資、途上国への技術移転の円滑化についてワークショップを開催。長期目標については、年末のCOP14と並行して開かれる第四回作業部会で検討します。

日本が提案した産業・部門別に温暖化対策に取り組む「セクター別アプローチ」は、計画策定で、ワークショップで検討する問題の一番目に記されていました。

ところが途上国から「適応策などほかに優先すべきことがある」と異論が出るなど調整が難航。その結果、技術移転を促進するための手段として第三回の作業部会で検討されることになりました。

交渉が本格化する〇九年の作業計画は、第四回作業部会までに決めるとしました。

幸運に過ぎなかった「食糧輸入大国日本」( 08/4/7)

NIKKEI NET 経済羅針盤 日本経済新聞

国際情勢がわかる 連載<第11回>

吉崎 達彦 氏

双日総合研究所 副所長

「溜池通信」主宰

幸運に過ぎなかった「食糧輸入大国日本」( 08/4/7)

もしもあなたがどこかの国の指導者であって、経済の方向性を決める立場であったとしたら、農業国と工業国のどちらを選ぶだろうか? 言い換えれば、今のグローバル時代において、農業国と工業国はどちらが「お得」だろうか。

目指すなら工業国より農業国がお得?

普通は工業国の方が「お得」と思うかもしれない。工業製品の方が付加価値は高そうだし、技術革新もあるし、いかにも先進国という感じがする。ハイテク産業を育成して、世界的な企業が続々と誕生する、となればますますカッコいい。おそらく世界中の国の指導者が、そういう産業政策を思い描いているのではないだろうか。

しかし考えてみてほしい。ここ数年、工業製品の価格は下落が進む一方だ。そして昨今の国際競争の激しさを考えると、このトレンドが逆転する可能性はきわめて低そうである。何より、中国やインドとコスト競争をしなければならないということは、利益なき繁忙を覚悟しなければならない。加えて工業国は環境問題もあるし、資源も大量に使うので、今から目指すのはあまりお勧めではないようである。

逆に農産物価格は上がる一方だ。そして今後も上がり続ける公算が高い。なにしろ食糧生産は自然環境の制約が厳しいので、設備投資によって生産能力を一気に倍にする、などという荒業が効かない。そして技術革新による生産性向上の余地も、それほど大きくはない。また、近年は異常気象や水不足による耕作不能が増え、将来の農産物供給に不安の陰を投げかけている。

そして農産物への需要は確実に増えている。世界の人口は増える一方であるし、新興国では経済成長によって生活水準が飛躍的に向上している。人はケータイやPCがなくても生きていけるが、メシは毎日食わないことには生きていけない。さらに言えば、農業は国土の環境保全にも役立つ。今の時代は工業国を目指すよりも、実は農業国の方が有利なのではないだろうか。

ニュージーランドという生き方

先月、ニュージーランドに出張している間に、そんなことを考えた。

ニュージーランドは、日本人にとってたいへん居心地のいい国である。四季のある温暖な島国であり、緑が多くて、火山と地震があって、温泉があることも日本と似ている。景色が似ているということで、『ラストサムライ』や『どろろ』などの映画はこの国で撮影された。治安がよく、車は右ハンドルだし、水道の水が飲めて、チップも払わなくていい。加えて日本語ができる人も多いので、外国に居ることをそれほど意識しなくて済む。学生の修学旅行などにはうってつけであろう。

その一方で違うところも少なくない。ニュージーランドは、日本より若干狭い程度の国土に、人口は400万人程度。横浜市、ないしは静岡県程度の人口しかない。羊の数は4000万頭なので、「人1人あたり羊10頭」である。つまり日本が工業国であるのとは対照的に、典型的な農業国というわけだ。

お陰で両国間の貿易は相互補完的である。日本はニュージーランドから酪農品や食肉、林産物、果実といった一次産品を買い、逆に自動車や電気機器といった工業製品を売る。お互いに持ちつ持たれつの関係だ。筆者は1996年からずっと、日本ニュージーランド経済人会議に参加しているが、両国関係はずっと良好である。それどころか「問題がなさ過ぎることが問題」などといわれることもある。

もちろん日本政府は、外国産の乳製品などに途方もなく高い関税を課している。このことに対し、ニュージーランド側には不満がある。しかし日本側が「良いお客」であるために、今まであまり大きな問題になることはなかった。少なくとも、民間同士の会合である日本ニュージーランド経済人会議において、農業問題で紛糾したという記憶は1回もない。商売の世界においては、「買い手は王様(Buyer is King.)」なのである。

日本は賢明な輸入戦略を

もっともこんな関係が、いつまでも続く保証はない。農業国の立場は強くなり、工業国の立場は弱くなっている。ニュージーランドと日本のバランスも、少しずつ変わりつつあるように思える。

今月、ニュージーランドは先進国では初めて、中国と自由貿易協定(FTA)を締結する。経済成長を続ける13億人の市場が、これからニュージーランドの農産物のお得意様になっていくことを見越しての決断である。インドなど高い経済成長を続ける多くの新興国が、それに続くだろう。彼らは豊富な経常黒字を有し、海外の高品質な農産物の味を覚え始めた。こうした中で、買い手としての日本のプレゼンスは相対的に低下している。

ところで今回の筆者のニュージーランド出張は、ジェトロ主催のセミナーに参加するためであった。東アジアの経済統合の必要性を説くとともに、「ASEAN+6」の枠組みに支持を集めることが目的である。

これに対し、ニュージーランド側の代表的な反応は、「ASEAN+6という枠組みは大いに結構だ。ASEAN+3にインド、豪州とともに、わが国が加えてもらえるのはまことにありがたい。しかし、なぜ日本は二国間のFTAには消極的なのか?」であった。 これには同国特有の事情がある。日本は豪州とのFTAの共同研究を開始しているが、ニュージーランドはまったく考慮されていない。ところがニュージーランドと豪州の経済はほとんど一体化しており、仮に豪州のみが日本向け関税が下がることになれば、ニュージーランドの畜産・酪農製品が比較劣位となる。とはいえ、日本の対ニュージーランド輸入の半分程度を農産品が占めている現状では、FTA交渉は政治的にきわめて困難といえる。(まして昨今の国内政治情勢では!)

この4月1日から、政府の小麦売り渡し価格が30%引き上げられ、パン、麺類、菓子など多くの食品の値段が上がることになった。牛乳、食用油、しょうゆなども値上がりしている。世界的な穀物価格の高騰が一度に押し寄せてきた形である。

「日本の食料自給率は4割に過ぎない。もっと自給率を上げなければならない」とは、しばしば指摘されるところである。筆者もまったく同感だが、「国内生産が4割」という事実の陰には、これまでの日本が「食料の6割も輸入できる幸運な国」であったことも無視できない。日本には経常黒字があったし、農業国との友好的な関係もあった。そして彼らは「日本はよいお客」と見なしてくれていた。

そうした古き良き時代が終わりつつある。国内需要が少子・高齢化で先細りとなり、買い手として強力なライバルが続々と誕生する中で、日本はいかにして国内の食料需要を満たしていくことができるのか。国内農業の建て直しも急務だが、賢明な輸入戦略を持つことも同様に重要であると強調しておきたい。

(双日総合研究所副所長・吉崎達彦氏 寄稿)

南極の大規模棚氷、温暖化で崩壊寸前(CNN)

(CNN) 英南極調査所(BAS)は、南極で地球温暖化の影響により、米コネチカット州とほぼ同じ1万4500平方キロメートルのウィルキンス棚氷が崩壊の危機にさらされている、と発表した。

米コロラド大学(コロラド州ボールダー)にある国立雪氷データセンターの教授は先月28日、米航空宇宙局(NASA)の衛星写真でウィルキンス棚氷の一部が崩れているのを発見し、BASに通報した。南極では夏の終わりのこの時期、こうした現象が最もひんぱんに見られるが、同日の午前と午後に撮影された写真を比較して崩壊が確認されたのは驚くべきことだという。

BASは通報を受けて、ウィルキンス棚氷の調査を実施した。BASのウェブサイトによると、棚氷の面積は10年前から6%前後縮小したが、教授が指摘した部分を含め、今月8日からさらに570平方キロメートルが失われた。これによって幅が細い棚氷の一部分が、残りの大部分を新たな崩壊から守る形になっている。

関係者は、棚氷の崩壊がこれほど早く進行することを予想していなかったと述べ、今後数日間から数週間の間に棚氷の運命が判明するだろうとしている。