2030年、集中豪雨相次ぐ 温暖化の影響予測
中日新聞 2008年5月30日 朝刊
地球温暖化を研究する東京大、茨城大、名城大など14研究機関でつくるプロジェクトチームは29日、2100年までに日本が受ける影響予測を発表した。今世紀末には気温が1990年比で4・8度上昇。海面は36センチ上がり、高潮時には137万人が浸水被害に遭う。北海道などでコメの収量は増加するが、世界遺産の白神山地のブナ林は消失するとした。
影響が深刻なのは水問題。気温が2度上昇する30年には太平洋沿岸や山岳地域で集中豪雨が相次ぎ、今より洪水被害額が年1兆円増大する。台風などによる高潮で東京、大阪、伊勢の各湾と西日本を合わせて52万人が浸水被害を受け、今世紀末にはさらに拡大する。海面上昇により沿岸の憩いの場が失われ、今世紀末には砂浜で1兆3000億円、干潟で5兆円の経済損失が生じる。
50年ごろのコメ収量は北海道で26%増えるなど、40-60年にかけて全国で増加傾向をたどるが、その後は不作が頻発して不安定化。耐暑性のあるコメ栽培が拡大する一方で、冷害が発生すると甚大な被害が出る。
健康への影響ではデング熱を媒介するネッタイシマカが今世紀末には関東圏まで北上し、ヒトスジシマカも現在の東北から北海道まで分布が拡大する。
研究を主導した茨城大の三村信男教授は「雨が多く山岳地帯が国土の7割を占める日本は、気候変動の影響を受けやすい。温室効果ガスの削減と同時に、適応に向けて対策を考えていかなければならない」としている。
【地球温暖化の影響予測】 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による、温室効果ガスの排出量に関するシナリオを基に、温度上昇や海と大気の間のエネルギーのやりとりなどをコンピューターで計算する「気候モデル」を使って行う。今回の影響予測は東京大や国立環境研究所などが開発した地球シミュレーターによる温度上昇予測のデータを用いた。