穀物価格の暴騰/矛盾が露呈したMA米
日本農業新聞 掲載日:2008-4-22 11:46:00
小麦やトウモロコシ、大豆に続いて、アジアの主食・米が急騰している。国際的な指標であるタイのうるち精米価格(船積み価格)の実勢は、約950ドル/トンとなり、昨年同期の3倍まで高騰した。1974年4月につけた過去の史上最高値605ドルを34年ぶりに更新した。シカゴ商品取引所の米先物相場も高値を更新しており、世界的な穀物の需給逼迫(ひっぱく)、価格高騰はとどまるところを知らない。
高騰の原因は、地球温暖化で異常気象が頻発し、不作が続いていること、バイオ燃料としての需要増、人口大国の中国やインドで経済発展が進み、畜産物消費が増えたこと――などの大きな構造変化であり、決して一過性の需給変化ではない。経済協力開発機構(OECD)・国連食糧農業機関(FAO)の共同研究は、穀物の需給逼迫は長期化し、価格は高止まりする可能性を指摘している。世界の穀物需給が過剰基調で経過した時代は終わり、新しい価格帯のステージに突入したと警告する。
自国内供給を最優先する食料ナショナリズムが生まれ、多くの国で輸出規制が始まった。途上国では食料が手に入りにくくなり、すでに37か国で暴動などの社会不安が広がり、まさに「食料有事」である。わが国でも商社が買い負けしている。金を出しても食料が手に入らない。世界最大の輸入国だけに食料安全保障の確立が急務である。
食料安保は、次の2点から確立されなければならない。1つは国内生産を増やし、自給率を少しでも引き上げることだ。食料危機のピンチを農業再生のチャンスに変える。まずは水田を最大限に活用、生産調整の助成金を生かして不足している穀物、特に飼料米を大幅に増産したい。耕作放棄地を解消、自給飼料を増産する必要がある。内外価格差の縮小を追い風に、農産物輸出も視野に入れたい。
外交面では、深刻な食料危機を国際交渉に反映させなければならない。大きな矛盾はミニマムアクセス(最低輸入機会=MA)米である。玄米で77万トンも毎年輸入し、日本の買い付けは国際価格をつり上げ、途上国の飢餓を増幅する危険がある。生産調整しながら消費量の数パーセントの輸入を義務付けるルールは、過剰時代の遺物であり、大詰めの世界貿易機関(WTO)交渉で見直されるべきだ。同時に、必要な穀物を安定確保するため、輸出規制の発動基準を厳格化する条項を盛り込むなど、交渉は輸出国と輸入国間のバランスが重要である。
日本が議長を務めるアフリカ開発会議(TICAD)が5月に横浜で開かれ、農業開発で積極的な援助を表明することにしている。食料の分配は市場に任せるのではなく、貿易ルールは、日本がWTO農業交渉で提案した「多様な農業が共存できる」ものに見直されなければならない。